将来、介護が必要な状態になってしまった時、もし自宅での介護を考えるのであれば「介護リフォーム」についても考えておく必要があるでしょう。
介護される人にとって暮らしやすく介護する人にとって介護しやすい家にするために行う「介護リフォーム」について知っておくことはとても重要だと思いますので、今回は介護保険制度の補助金や市区町村による助成金などもらえる金額や申請方法と、リフォームの例やその費用などについてしらべてみました。
介護リフォームとは
「介護リフォーム」とは、介護される人にとって暮らしやすく介護する人にとって介護しやすい家にするために行う住宅の改修です。
介護される人にとっては、「段差をなくし躓きにくくする」「床を滑りにくくする」「手すりを付け転びにくくする」などのリフォームによりバリアフリーな環境にすることで、危険が減り自分の力で行動できる範囲が広くなります。
また、介護する人にとっては、車椅子の利用を想定して「玄関や廊下などスムーズに移動できるルートを確保する」「トイレなど介助が必要な場所のスペースを広くする」などのリフォームをすることにより介護する際の負担を軽くすることができます。
介護リフォームの例
玄関の介護リフォーム
玄関の介護リフォームは、安全に外出するために欠かせない改修です。
車椅子を使うようになったときのことも考えてプランを考えるといいでしょう。
段差を解消する
上がり框の高い段差を低くリフォームすることで玄関の上り下りの負担を軽減できます。大工工事を伴うリフォームをせずとも固定式の踏み台や式台を置くことで段差を解消することも出来ます。
スロープや昇降機を設置する
スロープを設置することで車椅子のまま玄関の出入りができるようになります。
スロープを設置できるスペースがない場合は、車椅子のまま乗れる昇降機などを設置する方法もあります。
手すりを設置する
玄関の壁や玄関スロープなどアプローチ部分に手すりを取り付け使用することで移動や上り下りなどでの負担を軽減することが出来ます。
玄関椅子を設置する
玄関にちょっとした椅子を設置し靴を脱ぎ履きする際に使用することで体勢を崩し転倒することを防ぐことが出来ます。
照明器具を設置する
人感センサーやタイマーの付いた照明器具を設置し足元を照らすことで転倒などを防ぐことが出来ます。
床材を変更する
床を濡れても滑りにくい素材のものにすることで転倒などを防ぐことが出来ます。
外部の玄関スロープなどは特にすべりやすいので効果が大きいです。
工事にかかるおおよその費用
工事内容 | 一般的工事にかかる費用 |
段差の解消 | 約1万円~ |
スロープの設置 | 約20万円~ |
昇降機の設置 | 約20万円~ |
手すりの設置 | 約6万円~ |
玄関椅子の設置 | 約3万円 |
照明器具の設置 | 約1万円~ |
床材の変更 | 約5万円~ |
階段の介護リフォーム
階段は、躓きや踏み外しにより転落などの危険が伴いますので、自身で上り下りができる間はより安全に行動できるよう改修することが大切です。
手すりを設置する
階段の介護リフォームで第一に考えるのが手すりの取り付け工事です。
使いやすい高さや太さを考え設置することで階段の上り下りがより安全になります。
階段を緩やかにする
手すりの設置に加えて、可能であれば階段の段数を増やし勾配を緩やかにすることで身体にかかる負担を軽減することが出来ます。
昇降機を設置する
他のリフォームに比べ費用がかかるのが難点ですが、階段昇降機を設置することが出来れば車椅子の人なども階段を上り下りすることが可能になります。
工事にかかるおおよその費用
工事内容 | 一般的工事にかかる費用 |
手すりの設置 | 約10~15万円 |
階段を緩やかにする | 約30万円~ |
昇降機の設置 | 約50万円~ |
トイレの介護リフォーム
トイレはプライベート空間ですので、まずは一人で使用できるようプランを考え、そのうえで介助が必要になった時の設備も考えましょう。
使いやすい便座を設置する(和式から洋式への変更)
和式トイレを洋式に変更したり座面の高さを調整することで足腰への負担が軽くなります。
毎日入浴できない場合でも温水洗浄便座を設置すれば清潔さをキープできます。
手すりを設置する
手すりを付けることで、ドアの開閉時や便座に座ったり立ったりする際に体を支え安全に行動することが出来ます。
ドアの引き戸への変更し段差を解消する
トイレのドアを開き戸から引き戸に替え段差のない出入口にすることで、開け閉めがしやすくなり出入りもスムーズに出来るようになります。
工事にかかるおおよその費用
工事内容 | 一般的工事にかかる費用 |
和式から洋式への変更 | 約18万円~ |
補高便座の設置 | 約2万円~ |
昇降式便座への変更 | 約10万円~ |
温水洗浄便座の設置 | 約8万円~ |
手すりの設置 | 約5~10万円 |
ドアの引き戸への変更 | 約10~20万円 |
段差の解消 | 約5~10万円 |
浴室・洗面所の介護リフォーム
転倒事故の事例も多い浴室の介護リフォームはけがを防ぐためにとても大切な改修です。
滑っての転倒防止を第一の目的にプランを考えましょう。
浴室を拡張する
ある程度の広さを確保することで、介護する人が介助しやすくなり事故を防止することが出来ます。
段差を解消する
洗面所(脱衣所)と浴室の段差をなくすことで躓きによる転倒を防止することができます。廊下と洗面所(脱衣所)の段差も解消すれば車椅子での出入もスムーズになります。
ドアを折戸に変更する
浴室のドアを折戸に変更することで、開口部を広くとることができ浴室内のスペースも広く使えるので介護する人が介助しやすくなります。
床材を変更する
浴室の床材を替えたり、滑り止めのマットを取り付けることで転倒事故を防ぐことができます。あわせて保温性の高い材質のものを選ぶことでより快適に入浴することが出来ます。
手すりを設置する
浴槽から立ち上がるときや浴室内での移動の際に身体を支えるための手すりを設置することで安全に入浴することが出来ます。
洗面台を設置する
介護用の洗面台を設置することで、立って使うのではなく車椅子の状態や椅子を設置しそれに座った状態で使用することが出来るようなります。
入浴台を設置する
入浴台を設置することで、そこに座り手すりで体を支えながら片足ずつ自力で浴槽にはいることができます。
バスリフトを設置する
浴槽の立ち座りを行うリフトを設置することで介護する人の負担を軽減することができます。
工事にかかるおおよその費用
工事内容 | 一般的工事にかかる費用 |
浴室拡張 | 約40万円 |
段差の解消(すのこ設置) | 約25万円 |
ドアの折戸への変更 | 約8万円 |
床材の変更 | 約5万円 |
手すりの設置 | 約3万円 |
洗面台の設置 | 約2万円 |
入浴台の設置 | 約3万円 |
バスリフトの設置 | 約30万円 |
介護リフォームの流れ
介護保険の「住宅改修費」を受け取り介護リフォームする流れはおおよそ以下のようになります。
- 介護認定を受ける
まずは住居地の自治体から要介護(要支援)認定を受けます。 - ケアマネジャーに相談
担当のケアマネジャーに相談し、住宅改修のプランや施工業者を考えます。 - 施工業者との契約
施工業者を決め設計・工事の依頼をし、出された見積書の工事内容や費用を確認し契約します。 - 自治体に給付申請を行う
市区町村に申請書や工事の見積書など申請書類の一部を提出します。 - 施工・完成
施工業者により工事が行われます。 - 工事費の支払い
施工業者に工事費の全額をいったん支払い役所に提出する領収書などを受け取ります。 - 自治体に支給申請書類を提出
市区町村に支給申請書類を提出し介護リフォーム完了の報告をします。 - 「住宅改修費」の支給
市区町村から住宅改修費が支給されます。
介護リフォームの補助金
介護保険制度には「住宅改修費」というものがあり、一定の要件のもと申請をすることで補助金が支給されます。
補助金受給の対象要件
- 利用者が要支援または要介護のいずれかに認定されている介護保険の被保険者である。
- 改修する住宅が「介護保険被保険者証」に記載されている住所地の、実際に居住している住宅である。
- 利用者が福祉施設や病院に入居・入院中ではない。
補助金の上限
補助金の支給は、被保険者1人につき改修費用20万円までの9割~7割の額です。残りの1割~3割や20万円を超えた金額は自己負担となります。
介護保険による補助金の支給対象となる工事
介護保険による補助金が支給される工事は次の6つの項目です。
- 手すりの取り付け
玄関、廊下、階段、トイレや浴室などに手すりを取り付ける工事など
玄関アプローチなどの屋外工事も対象 - 段差の解消
玄関や廊下、トイレや浴室の出入り口などの段差をなくしたり、スロープを設置したりする工事など - 床材の変更
浴室、階段などに使われている既存の床材を滑りにくい材質の床材に取り替える工事や、車椅子の使用を前提に畳敷きの床からフローリングやクッションフロア材に張り替える工事など - 引き戸など扉の取り替え
居室やトイレ、浴室などの開き戸を引き戸やアコーディオンカーテンなどに取り換えたり、ドアノブの取り替えや戸車の設置により既存の扉を使いやすくする工事など - 洋式便器などへの便器の取り替え
和式のトイレを洋式便器に交換したり、既存の洋式便器の高さや向きなどを使いやすく変更する工事など - 上記工事に付帯する工事
給排水設備工事・下地工事など
「償還払い」と「受領委任払い」
住宅改修を行う場合、介護給付の受領方法には「償還払い」と「受領委任払い」の2種類があります。
- 償還払い
工事完了後に利用者がいったん工事施工業者に工事費の全額を支払います。
その領収書を申請書とともに窓口に提出することで、後から自己負担分を除く金額(改修費の9割~7割)が自治体から給付されます。 - 受領委任払い
工事施工業者には自己負担分のみ支払い、給付分(改修費の9割~7割)は必要な書類を窓口に提出することで自治体から業者に直接支払われます。
自治体によっては利用できない方法もありますので確認が必要です。
介護保険以外に介護リフォームを補助してくれる制度
介護保険以外にも市区町村によっては独自の介護リフォーム補助事業があります。助成金の支給条件や支給額、工事の種類などは自治体によって異なりますので市区町村役場のホームページや窓口やなどで確認してみましょう。
まとめ
介護リフォームをする理由として挙げられるのは、「介護される人が暮らしやすくなるから」ということはもちろんですが、「介護する人の負担が大きく軽減されるから」ということもとても重要なことです。
もし自宅での介護を考える場合は、ご本人だけでなくご家族の意向にも沿ったリフォームを考え、双方にとってよい結果になるよう検討しましょう。
また、実際に介護リフォームを考えるときは、ケアマネジャーや施工事業者からアドバイスを受け、現状だけでなく将来も考えてリフォームプランを検討することも重要です。