人が亡くなったときには特定の人がその人の財産を引き継ぐことになります。
一生に何度もあることではありませんが、いざそうなった場合にはさまざまな手続きを行わなければなりません。
今回はそんな相続手続きでの手間が省ける法定相続情報一覧図をつくってみました。
法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図とは、被相続人の相続関係を一覧にした図表で、その内容を法務局の登記官が証明したものです。
相続登記や預金の解約などの相続手続には、その手続きごとに被相続人と相続人の戸籍謄本や手続きによっては住民票などを用意する必要があります。
その際、法定相続情報一覧図が作成してあれば、それらを提出せずとも相続関係を証明できるようになるので手続きが楽になります。
法務局公式サイトによる説明は以下のとおりです。
法定相続情報証明制度は,登記所(法務局)に戸除籍謄本等の束を提出し,併せて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を出していただければ,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。
その後の相続手続は,法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことで,戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。(出典:法務局公式サイト)
法定相続情報一覧図作成の良い点と面倒な点
相続手続きでは被相続人や相続人の戸籍や住民票などたくさんの書類を用意する必要があります。
多くの手続きではコピーをあわせて提出するなどすれば原本は返却してもらえますが、手続きの数に応じてコピーの枚数も増えていきますのでそれなりの手間や費用がかかります。
また、コピーだけで手続きすることはできないため、同時にいくつかの手続きを進めたいときにはその数だけ原本を用意しなければなりません。
そんな時に役立つのが法定相続情報一覧図です。
法定相続情報一覧図の良い点と面倒な点
良い点
- 一部400円から750円程度の料金が発生する証明書類を必要以上用意せずにすむ。
- 複数の手続きを同時に進行することができる。
- 認証手続きと写しの交付は無料。
面倒な点
- 法定相続情報一覧図の作成と登記所(法務局)への提出に手間がかかる。
法定相続情報一覧図に似た相続関係説明図
法定相続情報一覧図と似た書類として相続関係説明図があります。
こちらも亡くなった人(被相続人)と相続人の関係を整理してまとめた図ですが、決まった書式などは無く法務局などの機関で承認を得る必要もないので手軽に作成することができます。
その反面、法定相続情報一覧図と異なり手続き時には戸籍謄本の原本などをあわせて提出しなくてはならならないため、複数の手続きを同時に進行するためには手続きの数だけ原本を用意しなければならないなど少し手間がかかることになります。
法定相続情報一覧図と相続関係説明図を比較
法定相続情報一覧図と相続関係説明図の大きな違いは、認証の有無・書式・相続手続時の使用方法の3点です。
認証
- 法定相続情報一覧図
法務局の登記官によって承認を得る必要がある。 - 相続関係説明図
法務局などの機関で承認を得る必要がない。
書式
- 法定相続情報一覧図
記載すべき事項など細かく決められた書式に則って作成しなければならない。 - 相続関係説明図
決まった書式は無く法定相続情報一覧図では記載できない情報を記載することもできる。
使用
- 法定相続情報一覧図
相続登記や預貯金の払戻しなど様々な相続手続きに使用できる。
各種手続きに際して戸籍謄本等の提出が不要になる。 - 相続関係説明図
手続きごとに被相続人と相続人の戸籍謄本の原本をあわせて提出しなくてはならない。
(以上参照:法務局公式サイト)
法定相続情報一覧図を作成
法定相続情報一覧図は、「相続登記の申請手続き」「被相続人の死亡に起因する年金等手続き」「被相続人名義の預金の払戻し手続き」「自動車の名義変更手続き」などに利用できる一方、相続関係説明図は「相続登記の申請手続き」にしか使えないという情報があったりしたため今回は「法定相続情報一覧図」を作成することにしました。
法定相続情報一覧図の作成には法務局公式サイトによると次の書類が必要になるようです。
- 故人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本・改正原戸籍謄本・除籍謄本
- 故人(被相続人)の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票の写し(法定相続情報一覧図に住所を記載する場合)
- 申出人(相続人代表者)の本人確認書類(自動車運転免許証のコピーなど)
以下、今回行った手続きについて順を追ってまとめてみます。
故人(被相続人)の戸籍謄本と住民票を取得
まず最初に行ったのが故人(被相続人)の戸籍謄本・改正原戸籍謄本・除籍謄本の収集です。
出生から死亡まで本籍地が同じ市区町村であれば比較的容易に取得できるのですが、過去に別の市区町村から転入・転出などをしていたため取得に少し手間がかかりました。
故人(被相続人)の戸籍謄本・改正原戸籍謄本・除籍謄本の収集方法
- 出生から死亡まで本籍地が同じ市区町村の場合
本籍地の市区町村役場窓口で相続に使う旨を伝えれば一式用意してもらえます。 - 本籍地が異なる複数の市区町村にあった時期がある場合
まず故人最後の本籍地の市区町村役場から除籍謄本を取り寄せます。
その後それを起点として一つずつ戸籍を遡り出生までの戸籍謄本・改正原戸籍謄本・除籍謄本をそれぞれの従前本籍地から取り寄せます。
相続人の戸籍謄本と住民票を取得する
相続人がそれぞれの住所地の役所で請求したりマイナンバーカードがあればコンビニのマルチコピー機で取得したりすることで比較的簡単に集めることができます。
登記所(法務局)へ提出する書類の作成
必要書類一式が揃ったら登記所(法務局)に提出する「法定相続情報一覧図」と「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」を作成します。
法務局の公式サイトに主な法定相続情報一覧図の様式や記載例などが掲載されていますので、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書と併せてダウンロードし空欄を埋めるように必要事項を入力すれば1時間もかからず作成することができます。
法定相続情報一覧図の様式及び記載例の入手方法
- 「法務局公式ホームページ」を開く
- ページ右側のバナー【法定相続情報証明制度】をクリック
- 具体的な手続についての項にある
【法定相続情報証明制度の具体的な手続について】をクリック - STEP2法定相続情報一覧図の作成の項にある
【主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例】をクリック - 開いたページ内の該当する様式や記載例をクリック
法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の様式及び記載例の入手方法
- 「法務局公式ホームページ」を開く
- ページ右側のバナー【法定相続情報証明制度】をクリック
- 具体的な手続についての項にある
【法定相続情報証明制度の具体的な手続について】をクリック - STEP3申出書の記入,登記所へ申出の項にある
申出書様式・申出書の記入例をクリック
登記所(法務局)に提出
「法定相続情報一覧図」と「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」が作成できたら他の必要書類とあわせて登記所(法務局)に提出します。
幸い市内に該当する登記所があったので直接窓口に提出することができましたが、もし近くにない場合や持ち込む時間が取れない場合は郵送で手続きを行うことも可能です。
申請に必要な書類と申請できる登記所は以下のとおりです。
申請に必要な書類
- 作成した法定相続情報一覧図
- 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
- 故人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本・改正原戸籍謄本・除籍謄本
- 故人(被相続人)の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票の写し(法定相続情報一覧図に住所を記載する場合)
- 申出人(相続人代表者)の本人確認書類(マイナンバーカードや免許証など)
申請できる登記所
- 故人(被相続人)の本籍地(死亡時の本籍)
- 故人(被相続人)の最後の住所地
- 申出人(相続人代表者)の住所地
- 故人(被相続人)名義の不動産の所在地
法定相続情報一覧図の写しの受け取り
法定相続情報一覧図の写しは申請から10日前後で受け渡しとなります。
その際には本人確認のための認印が必要になります。
さいごに
今回は「法定相続情報一覧図」を自分で作成してみました。
多少面倒な作業もありましたが、司法書士や行政書士などの専門家に頼まなければ出来ないような難しい作業でもありませんでした。
この書類一枚で本来必要になる何枚もの書類が省略できることや以降の各種手続きにかかる費用を節約できることを考えると、時間を作ることができるのであれば自身でチャレンジするメリットはあるだろうと思います。